ロン・ミラーの旋法理論~モードの響きを表すコードとリズム
隼田義博(尚美ミュージックカレッジ講師)
現代の私達が日常的に最も親しみ接している音楽のハーモニーは、長調短調という調性に基づく機能和声と呼ばれるものが主流で、そこで使用される和音は三度堆積の構造を持つ三和音ないし四和音である。しかしジャンルやスタイルを問わず様々な音楽の中には、こうした耳になじみやすい響きとは対照的に一風変わった響きの旋律や和音も当然存在する。映画やドラマなどの劇版音楽、コンテンポラリージャズ、印象派以降のクラシックなどを聴いてみると、調性の枠組みを持ちつつも機能和声では少し解しがたい響きや構造の和音を耳にすることがある。
こうしたものへの分析は先人によって様々に行われており、私達は様々なアプローチによってそれらを分析し理解することができるが、なかでも、「旋法の響き」というコンセプトでそうした和音にアプローチし、個々の旋法固有の響きを表すモーダルコードを体系化した(主著:Modal Jazz Composition & Harmony 1)アメリカのジャズコンポーザー、ピアニスト、教育者のロン・ミラーによる旋法和音の理論をひもといて、そうした「ユニークな響きの和音」へのアプローチを試みてみたい。
本発表においては、ミラーの旋法和音の理論を紹介しつつ、古今東西様々な音楽から聞こえるユニークな響きの和音にミラーの旋法理論でアプローチしてみる。また、そうした音楽のハーモニーの進行においては、どのようなハーモニックリズムがあるのかをさぐってみたい。