日本リズム学会

Japan Institute of Rhythm

 

57例会

 

リズム理論の観点から音楽ジャンル分類を考察するーージェントとプログレッシブ・メタルの比較

【要旨】 

リズム分析を通して、特定の音楽ジャンルのリズム面での特徴を明確にし、影響関係にあるとされる他ジャンルとの相違点および関係の再定義を試みる。ジェント Djent は、インターネット上での発信や交流を中心として発展を重ねている新たな音楽ジャンルである。ただし、その定義は未だ曖昧となっている部分が多い。ウェブ記事などではプログレッシブメタルから影響を受けて派生したジャンルであると説明される場合が多い。両ジャンルの共通点の一つに、変拍子を多用するなど、リズムが複雑・難解であるという特徴が挙げられる。ネット上のファンコミュニティ等を観察しても、両ジャンルともリズムの複雑さに魅力を感じていると思われる聴者が多いことがうかがえる。しかし、両者の持つリズムの複雑性は必ずしも共通の理論に基づいているとは言い切れない。今回はそれぞれに代表的なバンドの楽曲を取り上げ、分析を行う。民族音楽などのリズム研究で用いられる「分割リズム」「付加リズム」という2つの分類を参考し考察を行う。
音楽ジャンルについて考察する時、ジャンルを決定づける要因は多岐にわたっている事は留意しなければならない。例えば、サウンド的特徴、使用する機材・楽器、ファッション、ファン層、活動地域や時期、さらには商業的戦略など、様々な要素が絡み合っている。更にサウンド的特徴の中だけでも、音色、和声、旋律、構成、リズムなど様々なファクターが存在している。音楽ファンの間でもジャンルの呼称や分類を巡って議論がなされる事は多く、一つの要素だけで特定のジャンルを決定づける事はほぼ不可能であると言えよう。本発表の趣旨は、特定ジャンルの定義を断定するものではなく、リズムという枠組みからジャンル分類を捉えた場合のケーススタディを提示する事である。

【プロフィール】
大久保真由
ピアニスト・キーボーディスト。東京藝大楽理科在学中。演奏ジャンルはクラシック・HR/HM・歌謡曲・GS・J-popなど。都内、埼玉、神奈川、宇都宮などで演奏活動を行っている。2017年より横浜山手音楽祭の音楽劇に参加。主な関心はポピュラー音楽研究。